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めざせ知識の無駄遣い

電気系の国家資格の紹介

この記事はeeic (東京大学工学部電気電子・電子情報工学科) Advent Calendar 2022の5日目の記事です.

はじめに

せっかく電気系に進んで授業等で電気の知識を知ったのであれば,その知識を定期試験以外に役立ててみるというのはいかがでしょうか?

基本情報技術者試験応用情報技術者試験といった情報系の資格は少なからず知られていますが,よりハードウェアに近い電気系の資格というのは比較的知名度が低いように思います.本記事では,筆者の独断と偏見による「電気系っぽい」国家資格を紹介します.

電気工事士

  • 認定団体: 経済産業省

  • 合格率: 45.2% @令和4年前期(第二種)

一般家庭等における電気設備(コンセントなど)の工事ができるようになる資格です.第一種と第二種が存在し,第一種になると工場といったより大電力を使う電気設備の工事ができるようになりますが,第一種の取得には実務経験が必要となるため,基本的に第二種(電工二種)を受ける人が多いです.筆記試験に加え,制限時間内に指定の電気回路を組み立てる実技試験があります.筆記試験は電気工事に関する問題が多くを占めますが,電気回路理論第一でやったような交流回路の問題なども出てきます.

試験詳細: 一般財団法人 電気技術者試験センター

電気主任技術者電験

  • 認定団体: 経済産業省

  • 合格率: 8.3% @令和4年前期(三種)

電気工事をするにあたって実際の工事をする人が上述の電気工事士ですが,この工事の監督や,工事後の維持・運用の保安監督を行うことができるようになる資格です.第一種から第三種までの3種類が存在し,それぞれに保安監督できる最大電圧が定められています. もっとも受験されている第三種では 理論・電力・機械・法規の4科目で構成され,『電機機器学基礎』はじめ電気系の講義で学ぶ幅広い知識をこれらに応用することができます.一方で,過去問が出ない等試験の難易度は高く,電験一種は「電気の司法試験」と呼ばれるほどの難易度のようです.受験において必要な実務経験はありません.

試験詳細: 一般財団法人 電気技術者試験センター

電気通信の工事担任者

  • 認定団体: 総務省

  • 合格率: 28.6% @令和4年第一回(総合通信)

電話回線やCATV,ネットワーク等の工事や監督ができるようになる資格です.「アナログ通信」「デジタル通信」とこれらを包含する「総合通信」の三種類があります*1. 試験科目は「電気通信技術の基礎」「端末設備の接続のための技術及び理論」「端末設備の接続に関する法規」の三科目です.「電気通信技術の基礎」に関しては電気系で学ぶ電気回路理論やディジタル回路の知識を使うことができます.「端末設備の接続のための技術及び理論」では電話回線や通信網の理論が問われます*2

試験詳細: 電気通信の工事担任者 | 日本データ通信協会 電気通信国家試験センター

電気通信主任技術者

  • 認定団体: 総務省

  • 合格率: 29.7% @令和4年第一回(合計)

電気主任技術者と似ているポジションで,電気通信設備の保安監督を行うことのできる資格です.「伝送交換」と「線路」の二種類が存在し,それぞれ 伝送交換設備(通信機器)と線路(通信機器を繋ぐ線路及び付随する設備)の保安監督ができるようになります. 試験科目は「電気通信システム」「伝送交換設備及び設備管理(伝送交換)」「線路設備及び設備管理(線路)」「法規」の三科目です.「電気通信システム」は電気回路・電子回路の問題と通信理論の問題で構成されます.「伝送交換」の試験は通信網工学やネットワーク理論の問題で構成されるのに対して,「線路」は光ファイバーやケーブルシステムといったデバイス系・インフラに近い問題で構成されます.

試験詳細: 電気通信主任技術者 | 日本データ通信協会 電気通信国家試験センター

無線従事者

あらゆる無線通信機器を使うのに必要な資格です.大まかに5種類に分けられます.

総合無線通信士

  • 合格率: 5%

世の中のすべての通信機器での通信が出来るようになる,最高峰の資格です.試験科目が7科目あるだけでなく,そのうちの一つ(電気通信術)ではモールス符号の聞き取り・送信が求められるなどダントツの難易度を誇ります.

航空無線通信士

  • 合格率: 40%

主に飛行機や管制塔での通信ができるようになります.実際に旅客機に乗るにはパイロットの免許が必要ですが,グライダーといった小型の機体の場合はこの資格を持っておくと通信ができます.

海上無線通信士

  • 合格率: 40%

主に港や船舶での通信ができるようになります.とはいえ,航空通と同様,実際に働くためには海技士の免許が必要となりますが.

陸上無線技術士

  • 合格率: 33%

今までの資格とは異なり,無線機器の通信ではなく点検整備ができるようになる資格です.実技は無いですが,筆記試験で細かな工学の知識を問われます.

アマチュア無線技士

  • 合格率: 28%

今までの資格は業務上必用な通信に使える資格だったのに対して,これはアマチュア無線趣味に使える資格となります.最難関の一アマを取れば許可されている最大の出力での操作ができますが,科目合格*3が無いなど万全の準備が必要です.実技はありません.

無線従事者試験では,主に無線工学の科目において電気系の知識を使うことができます.高周波回路や変調方式といった3年生で習う知識も必要となります.

試験詳細: 日本無線協会

技術士(電気電子分野)

今までのような「何かができるようになる」といった資格とは毛色の異なる資格です.優れた知識を持っている技術者であるというのを国から認定される,技術者として最高権威の資格です. 一次試験と二次試験の2つを突破する必要があり,一次試験では電磁気学から情報理論パワーエレクトロニクスまで電気系を網羅した幅広い分野を問われます.さらに,二次試験ではほとんどの問が記述問題で構成され,試験対策がしにくくこれも難易度を上げる要因となっています.実技試験はありませんが,面接が存在します.

試験詳細: 試験・登録情報|公益社団法人 日本技術士会

電子機器組み立て技能士

名前の通り,電子機器の組み立ての知識と技能が問われる試験です.筆記試験と組み立ての実技試験で構成されます.筆記では電子回路や電子部品の役割を問われます.実技では級ごとに異なる課題が与えられ,提示される条件を満たすようにケース加工や部品のはんだ付けや接続を行う必要があります.趣味の電子工作とは異なり,かなりの制約条件が求められるので電子工作を嗜む人であっても慎重に作業を進める必要があるでしょう.上位の資格では実務経験が必要ですが,3級は実務経験の必要はありません.

試験詳細: https://www.javada.or.jp/jigyou/gino/giken.html

エンベデッドシステムスペシャリスト

紹介した中では一番情報系寄りの資格だと思います.IoT機器はじめ,組み込みシステムの設計に関する技能があると認められる,IPA主催の高度試験の一つです.午前試験と午後試験に分かれており,午前試験(他の高度試験と共通問題)では基本的な回路やネットワークの知識が問われ,午後試験では具体的なシステムが示されて要件を満たすために必要な処理や制御方法,データの時系列順の流れなどについて問われます.

試験詳細: 試験区分一覧 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

おわりに

自分が知っている限りの電気系っぽい国家資格を紹介しました.

気になる資格があれば,過去問を調べてみたり合格体験記を読んだりして,惹かれるものがあればぜひ時間を見つけて勉強してみてください.どこかのタイミングで役に立つことがあるかもしれませんよ!?

*1:以降は総合通信での話です

*2:ネットワーク工学概論や通信網工学が応用できるかもしれません.私は通信網工学を落としているので偉そうなことは言えません,,,

*3:一部の科目だけ合格点を上回った場合,二回目以降の受験でその科目が免除されること