de IBY

めざせ知識の無駄遣い

第一級総合無線通信士に合格しました

注意事項

この受験体験記に書かれていることは個人の見解です.ここに書かれていることが必ず合格を保証するものではありません.あくまでこういうことをした人がいたよという程度で捉えてください.

はじめに

1総通…今までどれほどの人がそれを求めて国家試験に挑み,そして何人が突破したか.

幸運にも,私は2023年3月期の国家試験に一発合格することができました.インターネットを調べると先人たちの合格体験記が目に入るので,同じように私もやったことを記録に残そうと思います.参考程度にしていただければ幸いです.

筆者の無線歴

2016年以前 電子工作をやっていたが無線は全く知らず

2017年 大学入学,アマチュア無線を知る.大学の社団局に入り3アマを取得.JJ1IBYを開局.

2018年 1アマを取得.CWでコンテストに出るようになる.

2020年 1陸技を取得.

2021年 航空通,1海通を取得.大学院入学.

2023年 1総通を取得.大学院修了(修士).

1総通を取得したことで,無線従事者を制覇することができました.

こちらを見てわかる通り,私は受験を志す前からCWでコンテストに出ていました.よって欧文に関しては経験がありました.ただ,和文に関しては一回も波を出したこともワッチしたこともなく,ゼロからのスタートでした.

受験のきっかけ

1アマを取得した時点で,その上位互換の資格に1総通というものがあるらしいということは知っていました.ただ,和文モールスの送受信が求められるということで当然受けようとは思っていませんでした.しかし,2020年,コロナ禍となりほとんど家から出なくなる生活となったと同時に,研究室に配属されて座学が無くなりました.時間ができたことから,なんとなく和文の符号を覚えるかという気分になってきました.ただこの時点では符号の形を覚えただけで,送信はもちろん聞き取りも全然やっていなかったです.

また,2020年は毎年7月にやっていた第一級陸上無線技術士の試験が11月に繰り下げとなった年でもあります.例年通りであれば大学院入試と被って受験しなかったであろう1陸技を受験できるということで一念発起して,まずこの年の1陸技に合格しました.その後,1陸技で他の通信士の科目が一部免除*1できることを知り,航空無線通信士海上無線通信士を取得しました.この時点で総合無線通信士以外の無線従事者を制覇していましたが,やはり1総通を受験したいという気にはなりませんでした.

そんな中,Twitterのフォロワーの1人であった狭間タスクさん(@JE1JGI)が2022年3月期の試験に合格され,受験記を執筆されていました.

モールス電信初心者が挑んだ第一級総合無線通信士(一総通)受験記 – plus TK2S 広報部

今まで私は「1総通は自分のような若輩者が受けるようなものではなく,もっと経験を積んだベテランが受けないと突破できないものだ」と思っていました.2019年から聞き取りを始めて3年で1総通を取得することができたということで,この受験記を通して「もしかしたら自分でもいけるのではないか」と思うようになりました.

また,この合格体験記を読んだ時点で私は修士二年であり,翌年からは社会人として働くことがほぼ決まっていました*21総通の試験は全て平日に行われ,また試験科目が多いことから複数日に跨ることになります.簡単に平日に動けるのは学生である今しか無いだろうと感じました.

以上のことが要因となり,2023年3月期の試験を受験しようと決めました.

1総通の概要を知る

↑ではこんな仰々しいことを書いてきましたが,そもそもこの資格がどのようなものであるか,試験形式はどのような感じなのかを知らないと以下の文章は全くつまらないものになるでしょう.上述の狭間タスクさんの記事にこの資格について詳しく記されているので,ぜひ目を通してみてくださいと言って詳しく書くのをサボります…

実際にやったこと

実際に私が受験を決意してからやったことを書いていきます.しつこいようですが,あくまで個人の経験談であることをご承知おきください.

受験以前に

1総通を受けようと思った後,私は受験するということ自体をほぼ誰にも言わずに受験終了まで過ごしました.*3 いろんな人に受けることを言うとプレッシャーを感じて本番で緊張することになると思ったためです.もちろん,大々的に言って自分にプレッシャーをかけてサボらないようにするというやり方が合っている人もいるでしょう.要は,他人からのプレッシャーをどう使うかは人それぞれということです.

電気通信術

一番の鬼門である電気通信術には特に時間をかけて取り組みました.

符号を覚える

既に欧文の符号はコンテストに出られる程度には慣れていたので省略します...*4

和文に関しては合調法で覚えました.以下のサイトを参照して,1日1行,5文字ずつ覚えました.次の日に前日覚えた行を書けるかどうか,書けなかったらその日は書けなかった文字+新たに学ぶ5文字 を覚えるようにする…といった具合です.これを継続すれば1か月もかからずに符号は覚えます.

www7.plala.or.jp

受信練習

受信に関しては,受験を決意した2022年5月頃から時間を見つけて聞きつつ,11月頃からは出来る限り毎日やるようにしました.

12月まではモールス練習帳を使って受信速度をあげつつ,1月からは日替わり 通信術練習(モールス受信)を使って雑音や額表に慣れていきました.直前にはこんな感じの雑音ASMRを同時再生しながら受信しました.


www.youtube.com

速記のための文字

受信において最も避けなくてはならないことは,聞き取れないことよりも「聞き取ったが書いているうちに次の文字が来て混乱し,以降数文字落としてしまう」ということだと思います*5

これを避けるためには素早く筆記する必要があるのですが,私は筆記体の文章が書けません.いろいろ試行錯誤をした結果,次のような筆記体とブロック体を混ぜた文字を使うことにしました.

欧文受信で使った文字 + 「四」

また,和文を受信する時に「四」を書くのにどうしても時間がかかったため,〇に八を書くような書きかたをするようにしました.ただ,これはもはや略字に近い書き方なので,品位で引かれているかもしれません.

筆記用具

文字を素早く筆記するためには,字体だけでなく滑らかに書ける筆記用具を使う必要があります.私は筆圧が強いのでシャープペンシルだと折れてしまうと思い,ボールペンを使うことにしました.プレゼントで貰った高いボールペンなども試してみましたが,最終的にジェットストリームを使うことにしました.安価なのに滑らかに書けて,今も普段使いしています.

受信用紙

実際に受験する際は,専用の用紙に受信した文字を書きとることになります.情報通信振興会のWeb通販に練習用紙が売っているのですが,それだけでは量が少なく不安だったので,plus TK2S 様にて配布されていた練習用紙PDFを大量に両面印刷して使っていました.*6

plustk2s.com

欧文の受信

欧文は既に経験があったので,20WPM程度から始めて最終的に25WPMで聞き取りを行っていました.最初はモールス練習帳の英単語を50語ずつ普通の大学ノートに書いていきつつ,年明けとともに日替わり 通信術練習(モールス受信)の欧文普通語を受信用紙に書いていきました.

また,他の受験記を見ると欧文受信中にページをめくる作業がかなりリスクのある行為であるように見えたので,文字を小さくしてできるだけ1通を1枚に収められるように練習しました.

和文の受信

和文も同様に,モールス練習帳の和文暗語を10WPMぐらいから大学ノートを縦にして書き始めました.次第に速度をあげていき,最終的には24WPMで受信用紙に書いていきました.練習当初は①符号を聞く→②それに合った合調を思い出す→③文字を認識する というステップを踏んでいましたが,練習するうちに①と②が同時にできるようになりました.

額表を覚える・反響と闘う

文字をだいたい書けるようになると,額表を覚える段階に移りました.具体的には,1月の年明けとともに「日替わり通信術」に移行して額表形式で筆記するようになりました.ただ,本文と比べて額表がうまく取れないことが多々あったので,額表だけ集中して練習できるモールス練習帳(電報編)も並行して使うようになりました.*7

また,他の方の受験記で「試験会場は広いから音が反響する」とのコメントを見ていたので,当時実装されて間もなかった「日替わり通信術」の反響機能も早速活用させていただきました.

文字の推測をやめる

受信に関して一番キツかったことは,慣れるとともに単語を推測してしまうようになったことです.慣れないうちは聞こえる符号をひたすら書き続けているだけなのですが,慣れると余裕が生まれてしまい単語を推測してしまうようになりました.ここで推測していた文字と異なる文字が登場すると当然混乱して,文字を落としてしまいます.*8

これを避けるために,本文の筆記中はTo欄の余白を見るなどして,文字をなるべく見ないで書くことを心掛けました.そもそも今まで書いた文字を見ることがなければ予測することもないというわけです.見ないで筆記するというのは怖く,最初のうちは本文を線の上から外れることなく書くのに苦労しましたが,練習すれば慣れます.予測をなくす努力よりも楽に習得できると思います.もちろん,推測の癖が最初から無ければこんなことはしなくて大丈夫です.

同様に,和文も現在書いている行の2行ほど左側を見ることで日本語を予測できないように心掛けました.

簡易的な採点を行う

電気通信術の試験は減点方式で行われます.誤字・冗字が1文字あたり3点,脱字が1文字あたり1点減点されます.この3つの間違いにだけ着目して,額表形式で練習を始めた後は毎回簡易的に採点をやりました.最初はひどい点数で落ち込みますが,次第に合格ラインである70点を超えてきて成長を感じられます.点数が伸び悩むようであれば思いきってWPMを下げてやってみて自己肯定感を保ちました.因みに,試験日まで満点が出ることはありませんでした.

そんなわけで,最終的には欧文25WPM,和文24WPMで額表も含めて練習をした状態で本番に臨みました.

送信練習

受信練習を行うとともに,送信練習も1月からするようになりました.重要なのは,送信と受信を同時に進めることです.送信は基本的に自分が打った符号が合っているかどうか聞きながら進めるので,受信もできるようになっていないといけません.

使ったもの

電気通信術の送信は縦振り電鍵かパドルを選ぶことができますが,私は最初からパドル一択でした.パドルは大学社団で使っていたので,ノウハウがあったためです.

他の方の受験記を参考に,年末に秋葉原の富士無線でGN-607Fを購入*9するとともに,AmazonでTAM-KEYER102を,情報通信振興会の通販で和文と欧文の電報練習帳を買いました.

www.ghdkey.com

www.dsk.or.jp

www.dsk.or.jp

練習方法

電報練習帳の最初に送信形式が記載されているので,これを参考にまずは自分が打てる速度で打電してみます.大丈夫そうであれば速度をあげていき,ミスが増えてきたらそこで止めて以降その速度で練習する…という具合でやっていました.

練習するにあたり,短点だけで構成される文字,つまり I,S,H,5,欧文訂正符号 は慣れるのに時間を要しました.これに関してはとにかく量をこなして,Sならこの時間だけ指を置く,といったことをほぼ無意識にできるようにするしかないでしょう.4やVも同様に慣れるのに時間を要しました.

電報練習帳は最終的に欧和ともに2.5周ぐらいしたように思います.*10

過酷な状態を作り出す

本番では緊張した状態で試験に挑むことになります.普段家で自分のペースやっているだけでは本番の時にやっていけないだろうと思い,以下のような状況を作り出して送受信の練習をやったこともありました.自分でいろいろ試してみましょう.個人的には朝起きてすぐを推します:

  • ジョギングの直後にやる・・・緊張状態を疑似的に作り出すことができます.
  • 酒を飲んで酔った状態でやる・・・特に受信において,聞いてから書きとるまでにラグが存在し,かなりハードモードになります.
  • 朝起きてすぐ(朝食前)にやる・・・ボーっとしているので判断が鈍ります.
  • 1時間くらい連続して送信をやりつづける・・・最後の方はかなり消耗します.この状態でやるのはかなり効果的でした.時間がないとできませんが…

パドルの握り方

A1 Club のWebサイトに簡単な持ち方が書かれていたので,これを参考にしながら自分が打ちやすい位置やパドルの動く度合いを調整しました.これはとにかくいろんなパターンを試してみるのが一番手っ取り早いです.

パドルは右手で操作していました.パドルの握るところと自分の体が垂直になるように置くと肩がすくむような形になってやりづらかったので,パドルを斜めにして*11机上に肘を置いてやっていました.

送信速度

最初は自分がミスらない遅い速度から始めつつ,最終的にはTAM-KEYER102の「E」の右端に目盛りが来るような速度に合わせました.

この速度で時間を測ってみると,2通送信する間で約4分弱でした.これなら訂正を途中でいくつか入れても未送信になることは無いだろうと感じました.

練習時の速度

ケーブルの加工

送信試験の試験会場には備え付けの縦振り電鍵があり,自分でエレキ―を繋げる時はワニ口クリップでその端子を掴めるようにしていないといけません.TAM-KEYER102 と一緒に先端がむき出しの接続用ケーブルが同梱されていたので,秋月電子でワニ口クリップを購入してはんだづけしました.

工学

1陸技を持っていたので,全て免除しました.おかげで電気通信術とほかの試験の間に1日何もない日ができて,追い込みに力をいれることができました.

英語

普段から英語に触れていたのでほとんど勉強していません.過去問と同じ問題が出ることはないので,普段から慣れるに越したことは無いでしょう.*12英会話の試験に関しては,聞き取れたとしても専門用語が理解できずに解くことが出来ないということが起こりうるので,過去問を見て専門用語を出来る限り覚えました.*13

法規

海上無線通信士を受験したときに合格点ギリギリで合格したという経緯があり,法規は1か月半前ごろから着実に覚えていくようにしました.

ひたすら過去問学習です.ネットを調べると十数年分の過去問が簡単に手に入るので,暗記します.5年分ほどやっていると「ある条文にしか存在しない言葉遣い」をなんとなく覚えます.対応する法令の原文を見るためにe-Govで検索しながら,「この言葉遣いが出てきたらここが聞かれるな」といったことを覚えていきました.

世界的な法律(SOLAS,無線通信規則とか)は以下のサイトを参照しました.原文なので英語ですが,,,

morsecode.wiki.fc2.com

https://www.samgongustofa.is/media/english/SOLAS-Consolidated-Edition-2018.docx.pdf

と書いてきましたが,一総通の問題は海上無線通信士とほぼ同じなので,世の中に出ている三海通の教科書で学習した方がコスパは良い気がします.

地理

地理は本番の1か月前くらいから本腰を入れ始めました.

日本中,世界中の港や海岸局等の名前を聞かれます.地図帳を開いてぜんぶ覚えるなんて無理無理カタツムリなので最初から過去問学習一本でした.

ネットで白地図を探して印刷し,過去問を5年分くらい最初から答えを見て,白地図に書き加えていきました.それを赤い下敷きで隠しながら覚えていき,以降の過去問を解いていきました.初出の地名が出たら適宜白地図に書き加えていったので,最後はゴチャゴチャな地図になってしまいました.世界地図は地図・路線図職工所様で,日本地図は学習プリント.com様のものをお借りしました.

第4問の国名を答えるやつは,ひたすら都市名⇔国名の対応を一問一答形式でルーズリーフに書いて覚えました.学生時代を思い出す作業でした.

白地図と国名リスト.中学生かな?

ここで重要なのは,解答は選択肢で与えられるということです.つまり,一言一句綴りを覚える必要はなくて,なんとなく覚えていればよいわけです.なので,訳わからない覚え方をした都市もあります*14.どうしても覚えられない時はGoogleMapでその都市のストリートビューを見たりしていました.

第四問後半の文章題はほぼ同じ問題が繰り返されているので過去問学習でなんとかなりました.

受験当日

受験会場は無線従事者試験でお馴染みの江間忠ビルでした.自分を合わせて30人くらい受験者がいたように思います.

1日目

1日目,3月14日は電気通信術でした.勝どき駅から歩いていき,午後からだったので途中にある松屋で昼食を食べて,ローソンで大粒ラムネ*15を買ってから1時間前くらいに会場に入りました.

会場には既に数人いましたが,席を選ぶ余裕はあったのでスピーカー直下の席に座りました.*16

あまり人に言ってなかったとはいえ当然緊張していたので,送受信の練習はせず,ひたすら音楽を聴いて落ち着こうとしていました.イヤホンを外すと他の人が縦振り電鍵を打っている音が聞こえてやめてくれーという感じだったので,15分前までずっとこんな感じでした.

テンポが速い曲で盛り上がろう!という気分では無かったのでゆったりとした曲調を選んでいました.

songwhip.com

15分前になると試験の説明が始まります.緊張していると思いますがちゃんと聞いておきましょう.

受信

時間になると最初に受信が始まりました.和文が5枚,欧文暗語が4枚(だったかな?),欧文普通語が6枚でホチキス止めされてそれぞれ練習用紙と一緒に配られます.最初に名前と受験番号を書くように言われるのですが,ここで手が思うように動かずまずいぞという気分になりました.「これが狭間タスクさんが言ってたやつか~」と客観的に考えるようになるとだいぶマシになりました.

次に音量調整が行われましたが,スピーカー直下であったことと,日替わり通信術で反響付きの音声に慣れていたので違和感を感じることはありませんでした.

最初に和文が始まりました.日替わり通信術で聞いていたよりも速度が遅く,「思ったよりいけそうだ」と余裕を取り戻し,額表含めほとんど埋めることができました.とにかく「発信番号は1文字のこともある」を心に刻みながら額表は埋めました.

続いて欧文暗語が始まりました.一通目よりも二通目のほうが長く,「はやく終わってくれ~~」と祈りながら書きました.

最後に欧文普通語が始まりました.一番音声が速いとはいえ,日替わり通信術で聞いていたものよりは遅い印象で丁寧に書くことができました.1通を1枚に収める練習をしていたので途中でページを繰ることはありませんでした.

この時点で「これいけるんじゃないか」と思い,後半の送信に取り組む自信となりました.

受信練習用紙.いくつか取りこぼしている.

印刷電信

仰々しい名前ですが,ただのタイピング試験です.相当パソコンを触っていない人でない限り合格します.タッチタイピングできるのでさっさと終わらせました.

私は受験番号が後ろの方で呼ばれるまでに時間があったので,始まるまでの間に1,2通送信練習をしました.

送信

印刷電信が終わると部屋を追い出され,別の部屋で送信の試験が行われます.自分が呼ばれるまでは廊下の椅子で待機することになります.

膝の上に全ての道具を置いて練習するなんて無意味だと思ったので待機している間は練習などはしませんでした.ひたすら音楽を聴いて落ち着こうとしていました.

他の人を見てみると,縦振りとパドルが7:3ぐらいの比率でした.みんな器用だなー.

待っている途中で「送信試験を辞退したいです」「自分の名前しか打てないのですが…」といった声が部屋から聞こえてきて社会人の忙しさを再認識しました.*17

ようやく呼ばれると,部屋の中には机が8台ほど部屋の壁に沿うように並べられており,そのうちの一つに案内されました.試験官の方にパドルとエレキ―を使いたいという旨を伝え,備え付けられている電鍵についている端子をワニ口で挟むように設置しました.

最初に受験番号と氏名を打電するように言われます.他の方が書かれているように,私も受験番号を打ち間違えました.避けられない運命なのかもしれません.打電後,試験官の準備が完了するまで練習していてよいと伝えられたので,エレキ―の速度を若干遅くしました.苦手なH,S,Vを打電しながら調整し,最終的に「E」の左端に目盛りが来る程度の速度にしました.

最終的に決めた速度

好きなタイミングで始めて良いと言われたので,気持ちを切り替えて集中するために始めるごとに「では,お願いします」と言ってから打電を始めました.

基本的に電報練習帳と同じように打てば大丈夫です.こちらも練習時よりもエレキ―の速度を遅くしたので訂正は一通につき2,3回ほどで済みました.

和文では「ヱ」がありました.また,漢字の「二」と区別をつけるためにカタカナの「ニ」の線が同じ長さで印刷されており,「この前Twitterで見たやつだ~」と若干リラックスしながら打つことができました.

欧文普通語の送信中に後ろの受験者が電話の送信を始めて声が聞こえるようになりましたが,集中していたのであまりダメージは無かったです.

ここで気を抜いてしまったのか,電話の送話の際になぜかFをユニフォームと発音してしまいました.電話の試験を受けるのは3回目でしたが,初めて「訂正」を発声しました.

終了後,試験官から講評を伺いました.「送信時間はめちゃ余裕があります」「符号もきれいですね」といただいた一方で,「単語間の空白が短く,文字が全て繋がっているような感じでした」との講評をいただきました.「それは品位に該当しますか」と尋ねたらそうですと答えたので,お礼を述べつつ少し不安を感じながら帰宅しました.*18

2日目

1日間を置いて3月16日は法規でした.他の従事者試験と同じ形式で特筆すべきことはありません.

3日目

3月17日は英語と地理でした.英語ではリスニングがあるので相変わらずスピーカー直下の席を確保しました.おかげで反響に苦しめられることはなかったのですが,専門的な港や船舶の知識を求められ,聞き取れてもわからないという問いがいくつかありました.でも一般的な問題が全てわかったので英会話で落ちることは無いかな~という気持ちでした.

地理はヨーロッパとアフリカでした.初出の地名は当然わからないので適当に答えたのですが,過去に出題された問がほとんどだったので自信を持って途中退出しました.

受験後の足でそのまま研究室に向かい,デスクの片づけをしました.

試験結果

試験が終わって2週間後,3月31日に合格をいただくことができました.

同時に試験の得点開示を行いました.開示をされたことのある方のブログを参照して,テンプレートに必要事項を記入し,切手300円分と返信用封筒を入れて晴海の日本無線協会宛に郵送しました.1週間で返信が届きました.

送受信ともに,かなりの高得点を達成することができました.普段の練習の賜物です.試験官から言われていたほど品位で引かれていることはなかったので一安心です.欧文でも「b」と「l」が取り違えられることが無かったようで,丁寧に採点してくれている印象でした.

さいごに

1総通はとにかく時間をかける必要がある点が(特に社会人にとっては)非常に難しいところだと思います.学生のうちは時間が確保出来るうえに,若いので物覚えが早い(はず).ぜひ学生ハムの皆さんには臆せず受験していただきたく思います.

社会人になったら時間を取ることは非常に難しいです.とにかく時間を見つけて,1日1回は送受信をやるようにすると良いと思います.曖昧なアドバイスで恐縮です...

最後に,私が勉強するにあたりツールや教材を無償で提供してくださった皆様と,私がモールス符号と出会うきっかけを作った大学の社団局*19に感謝の意を表し,締めの挨拶とさせていただきます.

*1:無線工学の基礎,無線工学A,無線工学Bなど工学関係をまるごと免除できます

*2:なのでこれを書いている今は新社会人です.めちゃめちゃ忙しい…!

*3:もちろんツイートもしてません.1総通に言及した初めてのツイートが合格報告です.

*4:強いて言えば,新合調法はやめたほうが良いです.

*5:聞き取れなかった場合,さっぱり諦めてその次の文字から始めたら1文字脱字で済みます.

*6:欧文用と和文用で,合計200枚ぐらいは使ったと思います.

*7:和文の場合,2通受信したあとは裏表を3枚の合計6枚分の受信用紙を使うことになりますが,そのうちの4枚分には額表が記入されていません.そこをリサイクルして,額表だけを書きとる練習に使いました.

*8:例えば,elect...という符号が来てelectronicだと思ってたらelectionだったりすると混乱してその3文字を落としてしまうでしょう.

*9:年末年始のクーポンで安く買おうと思ったら電鍵は対象外ということでガッカリしました.

*10:ただ,これ以前に私は欧文に関して数年の送信経験があることを念頭に置いてください.

*11:ちょうど握るところが4時の方向に来るぐらい

*12:個人的なオススメは,携帯電話の言語設定を英語にすること,wikipediaを見るときは英語版を参照するようにすること,海外のネットミームを知ることです.

*13:過去問に出ていた radio quarantine が今回問われていてマジでやってよかったなと思いました.

*14:Cross Corsen→クロス高専,Oostende→なんかOoってやつ,Bushehr→なんか読み方わからないやつ,ギリシャはOlympia以外sで終わる,等.現地の方には非常に失礼なことをしている気がしますが…

*15:緊張にブドウ糖が効くと思っていました.プラシーボでも効果はあった気がします

*16:BOSEのスピーカーがあるところです.

*17:おそらく私が最年少か二番目くらいだったと思います.

*18:品位は最大15点引かれるとのことなので,終始繋がりつづけていたのであればかなり失点しただろうな…という感じです.

*19:新入部員募集中!!!